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永山卓矢の市況取材ノート

筆者のブログにはより詳しい解説がされているので、是非ご覧ください。
永山卓矢の「マスコミに触れない国際金融経済情勢の真実」

http://17894176.blog.fc2.com/

ポイント

黒田日銀総裁の去就問題が大きなカギを握ることに
- FRBの強力引き締め策の真の目的と関係する安倍元首相殺害 -

 外国為替市場ではFRBがインフレ対応から強力な金融引き締め策を推進する姿勢を見せていることからドル高が進んでいる。対照的に、欧州ではロシアからの原油や天然ガスの供給途絶から経済活動が悪化するとの懸念が拭えないことからユーロ安圧力がくすぶっており、ユーロ・ドル相場は先週には一時的に1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を割り込む場面が見られた。また先進国・地域の中央銀行では唯一、日銀だけがそれまでの大規模緩和策を維持する姿勢を示していることから円安圧力も根強い状況にあり、ドル・円相場は先週14日には1ドル=139円40銭付近まで上昇した。

最近のインフレ圧力の主因はエネルギー市況の高騰にある

 先週13日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の伸び率は総合ベースで9.1%となり、前月はおろか事前予想も大幅に上回った。その一方で、エネルギーや食品を除いたコア・ベースで見ると5.9%しか伸びておらず、事前予想の5.7%は上回ったとはいえ前月の6.0%を下回っている。総合ベースの伸び率は第二次石油ショックによる強烈なインフレに見舞われた82年以来の水準を更新しているものの、コアで見ると3月の6.5%をピークに、それ以後も高原状態が続いているとはいえ、少なくとも伸びが鈍化しているのは間違いない。これは3月をピークに賃金上昇スパイラル傾向の勢いが鈍化しており、最近のインフレ圧力の高まりが原油その他のエネルギー価格や穀物はじめ食料品価格の高騰によるところが大きいことを示唆するものだ。

 このうち穀物市況については、黒海をロシア海軍が占拠していることでウクライナからの輸出が停滞していることから小麦相場を中心に高騰していたが、先週13日に両国に国連やトルコをまじえた協議で貨物船の安全な運航を保証する「回廊」を設定し、輸出を促進することで基本合意したこともあって急落し、ロシア軍がウクライナに侵攻する以前の水準まで下がっている。問題はもう一つのエネルギー市況についてであり、米欧勢がロシア産石油の輸入禁止措置を打ち出すと、ここにきてロシア側が主要パイプラインでの欧州向け天然ガスの供給を停止することでそれに対抗する姿勢を見せており、供給不安が拭えない。米政府は自国内のシェール業者に増産投資を促す一方で、先週後半にはバイデン大統領が直接、サウジアラビアを訪問して増産に動くように直接的に要請したものの、サウジ側は石油輸出国機構(OPEC)にロシアはじめ非OPECをまじえたOPECプラスの枠組みを重視して慎重な姿勢を崩していない。原油に石油製品を合わせて日量500万バレルに達するといわれるロシア産石油の供給途絶問題は、少なくとも現時点ではその解決の糸口が見えない状態にある。

 ただし、原油相場には季節性による特徴が見受けられる。例年、年間最大の需要期である夏場の米国でのドライブ・シーズン入りするのを前に石油業界が精製活動を活発化させ、ガソリンや中間留分の在庫を貯めておくため、そうした時期に原油の需要が盛り上がることで市況が高騰する傾向がある。具体的には、7月初旬の独立記念日(インデペンデンツ・デー)をメドに本格的にこのシーズンを迎えるため、それまでに市況が高騰する傾向がある。特に今年は新型コロナウイルス禍による行動制限が終わって初めてのシーズンを迎えるだけに、よけいに観光その他の需要が盛り上がるとの期待を増幅させた面があったといえる。ところが、その需要期も9月初旬の「労働者の日(レーバー・デー)」を境に不需要期に転じるとされており、市況はそれを先取りして下げていく傾向が強い。実際、金融市場が信用不安に見舞われやすくなる影響もあるだろうが、原油相場も秋季に下がる傾向が強いという特質がある。

 もう一つ指摘できるのは、FRBが強力な引き締め策を推進している影響がいずれ原油先物市場にも出てくると思われることだ。FRBが強力に利上げを推進し、量的引き締め策も並行して進めているなかで、流動性がひっ迫していくことで銀行が商品ファンド向けの与信枠を縮小すると、資金繰りが苦しくなって先物市場で運用するための証拠金の捻出が難しくなることが考えられる。それにより、先物市場ではその際に高値で買いついて身動きが取れなくなっているポジションの投げに拍車がかかってしまい、急落する恐れが出てくる。原油相場はロシア軍のウクライナ侵攻を受けて3月8日にWTIでバレル当たり130ドルに噴き上げたが、この水準を超えられないと投げを強いられる公算が高まるだろう。

需要不足による本来の不況が到来し株価は二段下げの展開に

 とはいえ、今秋に原油相場が急落するとしても、その影響が物価面に波及して実際にCPIその他の物価指標に表れるのは今年末頃になると思われ、それまではFRBによる強力な金融引き締め策は変わりようがない。先週13日に米CPIが発表された直後には、来週26~27日に開催されるFOMCで決定される利上げ幅が1%に達するとの見方が強まったものの、ウォラーFRB理事やセントルイス連銀のブラード総裁が従来通り0.75%の決定を支持したことから、そうした見方はすぐに薄れた。ただ利上げのペースについては、以前には年末までに政策金利を3~3.5%に引き上げるにあたり、7月のFOMCまで0.75%とし、9、11月は0.5%にとどまるとの認識が一般化していた。しかし、先週14日のブラード総裁の発言内容を見る限り、今回のCPIの発表を受けても7月のFOMCでは0.75%の利上げにとどめる代わりに年末までに政策金利を3.5~4%に引き上げる意向を示していたので、9月以降のFOMCでも0.75%の利上げが続く公算が高まってきたような気がしないでもない。

 そうしたなかで最近、主要企業の決算が良好な内容であることが好感されていることもあって株価が堅調に推移している。ただこの株高については、例えばダウのザラバで今年初1月5日の3万6,952ドルの史上最高値から6月17日の2万9,653ドルの安値まで、FRBの強力な引き締め策を織り込んで5カ月超で20%下落したなかで、それをひとまず織り込んだことで自律的に反発しているに過ぎない。いずれFRBによる強力な引き締め策が国内経済にオーバーキルをもたらし、また信用収縮から新興国通貨危機も引き起こされやすくなることで、第二弾の株安局面が到来するだろう。

 米国経済については、1-3月期の実質GDP成長率が前期比の年率換算でマイナス1.6%となり、4-6月期についても正確性で定評があるアトランタ連銀の経済予測モデル「GDPナウ」では直近でマイナス1.6%と試算されていたので、米国で景気後退(リセッション)の定義とされている2四半期続けてマイナス成長になったのはまず間違いないだろう。ただし、このマイナス成長は需要が盛り上がっていたなかで、新型コロナ禍から経済活動が正常過程に復帰するにあたり供給制約によりもたらされたものであり、実際にこの間、雇用面では好調な状態が続いて労働市場はひっ迫していたものだ。そのため、2四半期続けてマイナス成長になっても、全米経済研究所(NBER)はこれをリセッションと認めない可能性がある。FRBの強力な引き締め策がいずれ需要面で打撃を及ぼすことで、本来の需要不足による不況が訪れるはずであり、それを織り込む段階になって本来の株安の波動に回帰していくだろう。基本的に株価は二段下げの形で下げていくと想定しており、現在では一段目の下げが終わり、二段目の下げが始まる以前の修正高局面を迎えている局面にあると推察される。

安倍元首相謀殺で丸裸になった黒田日銀総裁の去就がカギを握る

 ところで、FRBが強力な金融引き締め策を推進しているのはあくまでもインフレ対応によるものだが、そこには隠れた重要な目的が三つほどある。バイデン政権で主導権を握っている外交問題評議会(CFR)系の勢力が米ドルの基軸通貨としての信用を維持するためにインフレ対応を重視していることや、信用収縮を引き起こすことでロシアや中国に金融攻撃を仕掛けること、そして米国経済のリセッション入りを早めることで回復傾向に転じるのも前倒しさせることにより、24年11月の大統領選挙で政権与党に好ましい環境を醸成してトランプ前大統領の再選を阻止することにある。

 最初のインフレ抑制からドルの信用を維持するという中長期的な目的についてはともかく、ロシアや中国への金融攻撃やトランプ前大統領の再選阻止といった短期的な目的を追求するにあたり、日銀が大規模緩和策を続けていることが阻害要因になっている。そうした黒田総裁による大規模緩和策の継続を安倍元首相が支えていたのであり、いわば元首相が同じナチズム系の巨頭であるロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席、米国のトランプ前大統領を支える構図になっていたといえる。そうした背後関係を考えただけでも、安倍元首相はCFR系の意向で米CIAの工作員によって殺された可能性を考えないわけにいかない。

 今後、安倍元首相という強力な後ろ盾を失って「丸裸」の状態になったことで、22年4月8日とされている任期満了を待たずに、体調不良その他を理由に黒田総裁が辞任せざるを得なくなる可能性が高まりかねない。それにより、後任の総裁の下で日銀まで引き締め策に転じることにより、今秋には信用収縮が引き起こされやすくなっておかしくない。そこでCFR系の意向を受けたCIAの工作員は、黒田総裁のスキャンダル記事を各週刊誌の編集部に渡したとされており、いずれ週刊誌報道で攻撃されるようになるかもしれない。ただし、足元では岸田首相が安倍元首相の政策を受け継ぐなどその威光を利用して政権基盤を固める意向を示しており、日銀の金融政策についても例外ではない。また各週刊誌についても、当面は安倍元首相や旧統一教会のことについて取り上げなければならないので、黒田総裁のスキャンダル記事が出てくるとしてももう少し後のことになりそうだが…

 黒田総裁の去就に絡む日銀の金融政策の行方がこれからの国際金融市場や外為市場に及ぼす影響は実に大きなものがある。FRBが強力な金融引き締め策を推進しているなかで黒田総裁が辞任せざるを得なくなり、後任総裁の下で日銀が現行の大規模緩和策の修正に動くと強烈な信用収縮が引き起こされる公算が高まる。それにより金融市場では相当にリスク回避が強まることで株価や低格付けの社債が一段と大きく崩落してしまい、安全資産である日米の国債が極端に買われることで、特に米国では長短金利の逆転現象がかなり顕著に見られるようになるだろう。外為市場では新興国通貨危機が高まり、最近のスリランカの事例に見られる財務基盤や経済状態が脆弱な新興国の間では国債の債務不履行(デフォルト)が続出する危険性が高まる。原油相場の暴落からロシアも相当に厳しい状況に陥って完全なデフォルトに陥るだけでなく、簿外で天文学的な不良債務を、「一帯一路」政策の失敗から対外的にも巨大な不良債権を負っている中国でも危機的な状況に陥りかねない。いうまでもなく、そうした状況になれば外為市場では基軸通貨である米ドル以上に日本円が買われるようになり、ドル・円相場は101円台の節目に向けて急落する可能性が出てくる。それに対して黒田総裁が辞任せずに任期満了までその職を全うすれば、現行の大規模緩和策が継続されることでリスク回避が軽微なものにとどまり、ドル・円相場も修正安にとどまることになりそうだ。

 相場サイクルの観点で見れば、日米の株価サイクルでは現在では8年サイクルの後半の4年サイクルの下降局面に位置しており、24年につけるであろう底値に向けて下げ続けていくことになる。ドル・円相場については15年6月5日の125円82銭を起点とする円安の8年サイクルの終点を来年(23年)に迎えるため、今年後半に到来すると想定されるリスク回避局面は軽微なものにとどまると予想している。本格的なリスク回避局面による株安や円高の動きは来年後半以降に到来するのではないか。

(2022年7月21日、記)

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ポイント

FRBの強力引き締めと日銀の大規模緩和の継続の背後にあるもの
- 水面下で激烈な日米闘争が繰り広げられている -

米CPIの発表を受けて急遽利上げ幅が0.75%に

 14~15日に開催されたFOMCでは94年11月以来、27年7カ月ぶりとなる0.75%の利上げが決まった。パウエルFRB議長は前回5月3~4日の会合が終わった後の会見で、次回となる今回やその次の7月26~27日の会合で事実上、0.5%の利上げの決定を“宣言”していた。実際、先週半ば頃までは今回の会合で0.5%の利上げが決まるとの見通しが強かったが、週末10日の5月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えて、週半ば頃から米当局からかなり大きな伸びになることを匂わすリークがされたことで、利上げが0.5%を超えるものになることを市場が織り込んで米市場金利が上昇していった。そして実際にCPIが発表されると、総合ベースで前年同月比の伸びが8.6%と前回や事前予想を大きく上回ったことから0.75%の利上げの決定が現実味を帯びるようになった。さらに週明け13日には、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙でFRB高官が0.75%の利上げの決定を容認した可能性が報じられたことから、もはや市場ではその決定が完全に既定路線化する雰囲気が漂うようになった。

 13日のWSJ紙の記事内容については、FOMCの会合が始まる1週間前から参加委員が発言を自粛するブラックアウト期間を迎えていたものの、CPIの発表を受けて利上げ幅を急遽、0.75%に拡大することになったなかで、それを市場に織り込ませるために意図的にリークされたものであったという。いずれにせよ、先週8日から利上げ幅が0.75%に拡大することを市場が一気に織り込んだことで、2年債の利回りが急上昇して2月以来となる逆イールドの状態になってドル高が進み、株価はダウで5営業日で2,815ドルも、またそれ以上に金利感応度が高いハイテク株で主に構成されているナスダックは4営業日で1,366ポイントも急落した。

 今回の政策決定を受けて、米中長期金利が急低下した一方で株価がハイテク株主導で反発した。会合後の会見でパウエル議長が次回の会合では利上げ幅が必ずしも今回と同じになることはなく、0.5%か0.75%になるとの見通しを示したことで市場では安心感が漂ったためとされているが、材料出尽くしになったのだからそれまでの動きの反動が進んでおかしくなかったといえる。実際には、これから急激な金融引き締めにより新興国危機が起こりやすくなり、また米国経済にもオーバーキルが引き起こされて景気後退(リセッション)に陥ることを織り込みだすとリスク回避が強まり、株価が一段と崩落していく危険性が高まる。実際、その翌日にはダウが3万ドルを割るなど株価が急落している通りである。ただし、これまでは米金利の上昇やドル高とともに株安が進んできたが、リスク回避が強まる局面では米長期金利が低下するとともに、外為市場ではドル高以上に円高が進むことになる。

経済実態を無視して強力な引き締め策が推進されてオーバーキルに

 どうしてオーバーキルによりリスク回避が強まる局面が到来することが見込まれるのかというと、FRBが経済実態を無視して強烈な引き締め策を推進しようとしているからだ。参加委員の今後の金利見通しの分布状況を示すドットチャートでは、政策金利であるFF金利の見通しは中心値で22年末が3.4%、23年末が3.8%となり、24年末には3.4%と利下げに転じる見通しになっている。4%近くまでFF金利を引き上げるということは、中立金利が2.5%とされていたので、最終的には実質金利を1%以上の水準まで引き上げることを想定していることになる。

 こうした見通しの根拠になっているのが経済実態の予測であり、順調に政策金利を引き上げていくにはそれなりに米国経済のファンダメンタルズがしっかりしている必要がある。実際、GDP成長率の見通しは22年と23年が1.7%、24年が1.9%と、潜在成長率をやや下回るとはいえ景気が底堅く推移するとの見通しが示されている。ところが実際には、米国経済の22年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率でマイナス1.5%とマイナス成長を記録しており、足元の4-6月期についても、アトランタ連銀の経済予測モデル「GDPナウ」では0%台とわずかにプラス成長を維持する程度にとどまっている。これでは、FOMC委員の大方の見通し通りに成長率が1.7%に達するには、今年下半期に4%近い高成長を実現する必要があるが、それはまず不可能である。パウエル議長はじめ多くのFOMC関係者は米国経済はしっかりしていると主張しているが、景気の先行指標である株価がダウで年初5日の3万6,952ドルの史上最高値から足元では3万ドル割れまで崩落しているなかで、実体経済が今後も底堅く推移することなどあり得ず、実際に多くのエコノミストが来年か遅くとも再来年にはリセッションに陥るとの見通しを示している。明らかにインフレ対応を最優先に、経済実態を無視して強力な利上げを推進していくために意図的に非現実的な見通しが提示されたと言わざるを得ないものだ。

CFR系が強力な引き締めでオーバーキルを引き起こす三つの大きな目的

 ではどうしてFRBが強引に強烈なオーバーキルを引き起こすことを目的にかなり強力な金融引き締め策を推進しようとしているのかというと、バイデン政権で現在、主導権を握っている外交問題評議会(CFR)系が何を目指しているかを考える必要がある。CFR系の意向を受けて、前FRB議長であるイエレン財務長官とブレイナード副議長主導で強力な引き締め策を推進している理由は三つある――結論から先に言えば、米ドルの基軸通貨としての信用を維持することや、中国とロシアを同時に金融攻撃で叩き潰すこと、そして2年後の大統領選挙でトランプ前大統領の再選を阻止することだ。

 バイデン政権では米ロックフェラー財閥本流系が背後に控えており、米国の世界覇権の維持を目指しているグローバル志向の軍産複合体が主導権を握っている。この軍産複合体は軍事産業系とCFR系の二つの勢力に大別できるが、このうち軍事産業系が米国の軍事力を増強させることでその覇権を続けていくことを目指しているのに対し、CFR系はドル基軸通貨体制を維持することで覇権を守ろうとする傾向が強い。そのため、軍事産業系は当然のことながら国防費の増額を主張しているのに対し、CFR系はあまりにその傾向が強まると財政赤字が膨れ上がってしまい、ドルの信用が毀損される恐れが出てくることから嫌う傾向が強い。

 通貨価値を維持していくうえで、制御できないインフレ状態が続くことほど恐ろしいものはない。欧州ロスチャイルド財閥の意向で動いていた大革命家のレーニンや大経済学者のケインズの指摘を待つまでもなく、通貨価値の毀損は国家そのものを破壊することにつながるからだ。そして基軸通貨の信用の毀損はそれを法定通貨としている覇権国の世界管理体制の崩壊につながり得るものであり、実際に戦後のドルを唯一の金の兌換通貨とするブレトンウッズ体制が、二度の石油ショックによる強烈なインフレ傾向から崩壊したのを見ればわかることだ。昨年11月初旬にFOMCが開催された翌週にCFR系がFRBにインフレ対応重視の姿勢に転じさせることになったのは、バイデン政権の支持率が低迷しているなかでその対応を求める世論が強かったこともあるが、より大きな要因はドルの信用を維持するためだったといって過言ではない。

 次に中国やロシアを同時に金融攻撃することについては、米国の世界覇権が08年9月のリーマン・ショックによる巨大な金融危機に見舞われたのを機に最盛期から斜陽期に転じたなかで、両大国を同時に軍事的に封じ込めることが極めて困難になりつつあることがある。さしあたり、今では直接的に米国の覇権を脅かす存在として中国が台頭してきたなかで、バイデン政権は同国を軍事的に封じ込めることを優先的に推進しており、世界各地に駐留している米軍の再配置を進めている。ところが今回、ソ連との冷戦が終わって30年以上が経つなかで、それほど多く駐留させておく必要がないと思われたことで欧州の駐留部隊を削減した間隙をついてロシア軍がウクライナに侵攻してしまった。そこでCFR系主導でドルの基軸通貨としての“絶対的な強さ”を武器に金融攻撃に出ることになったわけだ。

 そこで最後に米国内の要因として、2年後の11月の大統領選挙を巡る思惑が絡んだものが挙げられる。高齢で認知症に罹っていることが疑われているバイデン大統領が再選を目指すか定かではないが、有力な後継者が見当たらないだけでなく、大統領自身の支持率ももとより低迷していたのが、ここにきて一段と落ち込んでいる。そうしたなかで、新型コロナウイルス禍への対応として膨れ上がったバブルが崩壊することでリセッションに陥ることが避けられないとすれば、バイデン大統領が大統領選挙で再選を目指すか、もしくは後継者に“禅譲”するとしても、出来る限り早いうちに――できれば今年末までにそれが訪れることを望んでいるだろう。それにより、大統領選挙が行われる直前の再来年前半には景気回復軌道に乗っていくことが期待でき、選挙戦で有利に作用することが見込めるからだ。それに対し、トランプ前大統領を後押ししてその再選を望んでいるナチズム系の勢力としては、リセッション入りを遅らせて来年後半から再来年前半に迎えた方が、現政権与党の陣営には強烈な逆風が吹くことから望ましいことになる。

CFR系の目的実現には日銀の政策が大きな障害になっている

 バイデン政権で大きな影響力を行使しているCFR系の勢力としてはこれら三つの目的の達成を目指すにあたり、日銀が従来の大規模な金融緩和策を続けていることがその障害になっている。これら三つの目的のうち、最初のドルの信用を維持することについては大規模緩和策が続くことは望ましいものの、より緊急性の高い他の二つの目的を実現するには、日銀が強力な緩和策を続けているのは不都合極まりないものだ。ロシアはウクライナに軍事侵攻したことで米欧から同国の銀行が国際決済網から排除されてしまい、中央銀行の国外資産も凍結されているにもかかわらず、国際商品市況が高騰していることでそれほど大きな痛手を受けていないが、そこには日銀の政策が大きく寄与しているからだ。

 どうして日銀が原油や穀物といった国際商品市況の高騰から輸入物価が上昇しているなかで「悪い円安」が指摘されているにもかかわらず、従来の政策をそのまま続けているのかといえば、黒田総裁がその任期中にはその“甲板”の政策を下ろすことができないからだ。ただそこには、現在の日本の最高実力者であり、岸田政権にも大きな影響を及ぼしている安倍元首相の後押しを受けていることを指摘しないわけにいかない。ナチズム系の安倍元首相は表向き、軍事的に中国に対処するにあたり米国の要求に応じる形で憲法改正も含めて防衛力の強化を目指す観点から日米同盟を重視する姿勢を示しているが、本来的には同じナチズム系であるプーチン大統領を支援しようとしているからだ。またいうまでもなく安倍元首相は24年の大統領選挙でもトランプ前大統領が勝利することを望んでいるため、現時点では黒田総裁を後押しして日銀にこれまでの政策を継続させた方が有利なのである。

 今、日銀が大規模緩和策を続けるうえで、その強力な政策手段としているのが長期金利の上昇を抑え込むことを意図した長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)であるが、FRBはじめ海外の主要国・地域の中央銀行がいっせいに引き締めに動いていることで国内でも長期金利に上昇圧力が強まっており、それだけ日銀も指し値オペを発動する機会が激増している。特に最近では16~17日の金融政策決定会合の開催を控えて、そこでは現行の大規模緩和策を停止しないまでも、それを弱めることを決めるとの思惑から債券先物市場で外国人投資家が売り攻勢をかけており、それに応じて日銀もYCCの対象年限である10年債だけでなく、他の年限の債券にも指し値オペを出すことでその利回りの上昇を抑え込まざるを得なくなっている。

水面下では金融面で激烈な日米闘争が繰り広げられている

 そうしたなかで、日本の通貨当局が円安があまりに進んだのを受けて米国側にそれを抑えることに協力するように求めたものの、イエレン長官はそもそもその原因は日銀が国際協調を無視した政策を継続していることにあるとして相手にしない姿勢を崩していない。そこでは、一般的にはインフレ圧力を抑えるにはドル高が望ましいからだといったことがいわれているが、米国にとっては円安だけが進んでもあまり意味がないのであり、その本当の理由はこうしたことにあったわけだ。それに対し、日本では安倍元首相が麻生前副首相兼財務相を介して財務官僚を取り込んでいるなかで、財務省と日銀、金融庁が連名で円安が限度を超えて進む際には「必要な措置をとる」――すなわち円買い・ドル売り介入に動くことで米国債の売却をちらつかせて米国側を脅しているところだ。

 それに対し、米国側は米中央委情報局(CIA)の対日工作員が、黒田総裁の過去の中国マネーに絡む不正行為の暴露ネタを週刊誌の編集部に渡したという。それにより黒田総裁を23年4月8日までとされている任期を待たずに辞任に追い込むことで、日銀に大規模緩和策の修正に動かせようというわけだ。ところが、それにより支持基盤である中小企業のオーナー経営者から反発を受けるのを嫌って、自民党首脳が参院選が終わるまではそれを避けるように要請したのを受けて、CIA工作員がひとまず細田博之衆院議長に攻撃の矛先を変えたものだ。衆院小選挙区の区割り変更を巡り、議長であるにもかかわらず安倍元首相に配慮して「10増10減」に否定的な発言をするのはけしからんというわけだ。

 日銀まで引き締め策に転じてしまえば、さらに強力な流動性ひっ迫化をもたらすことで、債務不履行(デフォルト)に陥る国々が続出するなど相当に深刻な新興国危機が到来する恐れが高まるだろう。投機資金もひっ迫することで国際商品市場ではファンドの狼狽的な投げ売りに見舞われてしまい、原油相場が暴落するとロシアはウクライナで戦争を継続するどころの話ではなくなってしまい、プーチン大統領も厳しい状況に立たされざるを得ず、自身の失脚の危機を迎えかねない。天文学的な不良債務を抱えている中国もかなり厳しい状態に陥ってしまい、8月の北載河会議を経て今秋の共産党大会に向けて、習近平国家主席も苦しい状況に置かれるだろう。かといって、1ドル=150円程度まで円安が進んでしまえば、韓国や中国勢を筆頭にアジア諸国の多くはドル資金を調達するにあたり、邦銀や大手商社が信用保証をしているケースが多いので、やはり資金繰りがひっ迫して危機的な状況に陥らざるを得なくなる――いかに中国が台頭しても、少なくとも金融面では米国の足元にも及ばない状況にあり、またアジアの中心はあくまでも日本なのである。

 中国に対する安全保障面への配慮から日米同盟の重要性がさらに強調されているのとは裏腹に、水面下の金融面では安倍元首相とCFR系との間で熾烈な闘争が行われている。そしてその闘争の行方に中国を含む多くの新興国の命運が握られており、プーチン大統領も習近平主席も、そしてトランプ前大統領といった他の一連のナチズム系巨頭の命運ですら、安倍元首相の闘争の行方にかかっているといって過言ではないのである。

(2022年6月17日、記)

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2022年05月19日

ポイント

金利上昇やドル高は既に市場に織り込まれて行き過ぎの状態
- FRBは予定通り積極的に引き締めに動き景気を失速させる -

 外国為替市場ではFRBが強力な金融引き締め政策を推進する姿勢を示していることからドル高圧力が強い状態が続いている。特にドル・円相場は先進国・地域の中央銀行では唯一、日銀がそれまでの大規模緩和策を継続する姿勢を見せていることから鮮明な円安・ドル高傾向になり、4月28日と5月9日の2回にわたり1ドル=131円台まで上昇した。この間、当然のことながらリスク資産である株価はハイテク株を中心に軟弱な動きが続き、先週末の段階でナスダックは昨年11月19日の1万6,121ポイントの史上最高値から5月12日の1万1,108ポイントの安値まで、下落率は実に31%に達している。主力株で構成されているダウについても、1月4日には3万6,934ドルの史上最高値に高騰して以来、ほぼ一本調子で下げ続けており、同月12日の3万1,228ドルの安値まで、4カ月超で15%も下げている。

 ただ足元の動きで指摘すべきことは、5月6日まで株価が下がり続けたのは米長期金利の上昇を伴ったものであり、すなわちFRBの積極的な引き締め策の推進を警戒したものだったが、週明け9日からの4日間の下落過程では長期金利が低下していたことだ。これは、その前週末までの株安とは異なり、不動産バブルが崩壊しつつあるなかで、上海では長期にわたり都市封鎖(ロックダウン)が続いていることもあり、中国経済の悪化による世界経済の失速懸念が意識されるようになったことによるものだ。株安が続いていることに変わりなかったとはいえ、5月9日までと週明け12日以降についてはフレーズが変わっていることに留意する必要がある。

FRBは賃金上昇スパイラル抑制のために景気を失速させようとしている

 リスク回避が強まる場面になりつつあるなかで、FRBが積極的な金融引き締め策を緩和することを期待する向きが出てくるだろうが、FRB執行部を中心にFOMC関係者にはその意向はないようだ。それは一つにはロシアと中国を同時に金融攻撃で叩き潰そうとしていることがあるが、ここではもう一つの純粋な米国内の経済・金融問題に限定して指摘することにする。

 FRBが積極的に引き締め策を推進しようとしているのは巷間でのインフレ期待を沈静化させるためだが、それには米国経済をいったん失速させる必要がある。先週発表された米国の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)の指標からは、前年同月比での伸びが前月から鈍化したことでインフレがピークを打った可能性が指摘されており、実際に「定義上」では3月がそれに相当していたことが後に明らかになる可能性がある。とはいえ、各種の調査や市場の動きを見る限り、インフレ期待が沈静化する兆しは見受けられないため、経済・市場環境が変わらなければ今後もインフレ率は高原状態での推移が続く公算が高い。

 それは原油相場はじめ国際商品(コモディティ)市況が高騰した後も異例の高値圏で推移していることもあるが、それ以上に賃金上昇スパイラルに歯止めがかからないことによるところが大きいといえる。そのあたりは日本とは異なり、雇用の流動化が進んでいる米国では賃金上昇圧力が強まり始めると、それがスパイラル的に拡散する傾向が強いという事情がある。こうしたインフレ期待をしっかり抑え込まないうちに景気刺激的な政策姿勢に転じると、インフレが再燃することで景気が思うように浮揚せず、経済状態がスタグフレーションに陥る公算が高まってしまう。

 例えば、70年代から80年代初頭にかけて強烈なインフレ状態が続いたのは、そうした政策的な誤りによるところもその一因だった。当時はボルカーFRB議長が、金融政策の手段として金利ではなくマネーサプライを対象とする強力な引き締め策を推進したことで、世界的に景気が大きく落ち込むのと引き換えにようやくインフレ克服に成功したことを想起すべきである。

FRBは長期金利を押し上げるためにMBSではなく国債を減らしている

 ただし、FRBが積極的な引き締め策を推進する姿勢を見せれば、当然のことながら将来的に新興国通貨や株式はじめリスク資産市況の崩落により信用不安が強まってしまい、実体経済も悪化するのを市場が織り込むことで長期金利があまり上がらず、引き締め策が十分な効果を上げられない可能性がある。実際、FRBが引き締め姿勢を強めれば、中短期債の利回りが上昇した一方で長期債のそれがあまり上がらず、期間が長めのイールドカーブがフラットな状態が続いたものであり、3月には一時的に2年債の利回りが10年債のそれを上回る逆転現象が生じたものだ。そこでFRBは利上げとともに保有資産を減らす政策措置を導入したことで、長期債の売りが誘われることになったわけだ。

 いわゆる量的引き締め策(QT)が打ち出されたのは、中央銀行であるFRBがそうした資産を大量に抱え続けることは適切ではないためにそれを是正するためであるといったことがいわれるが、それ以外にそうした金融技術上の目的もあるわけだ。FRBが資産縮小に踏み込むにあたり、資産としての信用が低い住宅ローン担保証券(MBS)ではなく、国債を優先的に対象にしている理由がそこにある。実際、3月に逆イールドの状態から米長期金利が上昇傾向を強めていき、先々週末6日には3.1%台半ば近くに達している。その後、先週には中国不安による世界経済の失速懸念から12日には2.8%台に低下して逆イールドが再燃する局面が到来しただけに、FRBはいかに先行き不安を払拭していき、米国経済は拡大傾向を続けるという「虚勢を張る」ことで再び長期金利を押し上げることができるかが焦点になる。それでも長期金利が思うように上がらないと、FRBは今では量的引き締め策はFRBの保有資産の債券が満期償還を迎えるものを再投資しない「自然減」によるものにとどめているが、実際に市場に売却する必要性についても検討されていくのだろう。

FRBの強力な金融引き締め姿勢を市場が前のめりで織り込む展開に

 ここで大事なことは、中国リスクが顕在化するなどして信用不安が高まっても、FRBは強力な引き締め策を「当初の予定通り」貫徹するということだ。どこまで政策金利を引き上げるかといえば、かねがねパウエルFRB議長はじめFOMC関係者が指摘しているように、中立金利と同じ程度かそれを上回る水準に迅速に引き上げていくと提唱している通りである。

 この景気を冷やすことも過熱させることもない金利水準と定義されている中立金利というのは極めて抽象的な概念であり、具体的にどの程度の水準であるのか定かではない。とはいえ、FRBが金利政策のある種の目標水準として提唱しているものであるとすれば、FOMC委員による政策金利の長期見通しの分布状況を示すドットチャートで示唆されているはずだ。直近でこのドットチャートが示されたのは3月15~16日にFOMCが開催された際に公表されたものであり、そこではその中心値が2.4%とされていた。その意味で、この水準が利上げの最終地点を巡る大きな意味を有することになる。

 ただ、足元のFF金利の先物市場では2.8%まで上昇しており、既にその中立金利とされる水準を超えてきている。さらにこのドットチャートの上限は3%だったが、これを30年債の利回りだけでなく、先週前半には長期金利の指標とされている10年債のそれも上回った。これまでドットチャートの上限を長期金利が上回ったことはなかったものであり、30年債の利回りですら数えるほどしかなく、それもごく短期間に過ぎなかったものだ。いかにこれまで、FRBが強力に金融引き締め姿勢を打ち出してきたなかで、市場ではさらにそれをも上回る「前のめり」な勢いでそれを織り込んできたかがわかる。

もはや金利上昇やドル高が進む余地はなく今年後半は軽度な信用不安も

 ただ、FRBが想定している水準を上回るほどに市場が前のめりで織り込んで長短金利やドル相場が押し上げられてきたとすれば、もはや金利上昇やドル高が進む余地はそれほどないことになる。先々週末にかけて長期金利が上昇した後、先週初頭から低下してきたのは、中国不安が意識されたこともあるが、行き過ぎの状態にあったのが修正されつつある動きといえなくもない。だとすれば、現行の大規模緩和策の継続姿勢を示している日銀の黒田総裁が23年4月8日まで任期を残しているなかで、体調を崩すといった理由で任期満了を待たずに辞任せざるを得なくなる事態にならなくても、今年後半は中国やロシアその他、新興国危機から軽度の信用不安に見舞われるかもしれない。それにより安全通貨とされる円が買われやすくなることで、今年後半にはそれほど大幅に進むことはなくても、ある程度円高・ドル安に振れる可能性がある。

 それを乗り切ると、ドル・円相場には8年周期の円安サイクルがあるだけに、黒田総裁の任期満了まで日銀が現行の政策を継続していけば、来春にはもう一度円安が進む局面が到来するかもしれない。本格的な信用不安が到来するのは、株価の8年サイクルの後半期の4年サイクルの下降局面が到来する来年半ば以降のことであり、24年頃に底入れすると思われる日経平均は新型コロナウイルス禍で暴落した際の20年3月19日の1万6,358円の安値を割り込んでいくだろう。ただドル・円相場が底入れするのは、11年10月31日の1ドル=75円32銭から始まった16.5年周期の円高サイクルが底入れする28年前半頃に後ズレすると思われる。そしてその底入れの水準は、現行の円高の5年サイクルの起点である20年3月9日の101円18銭を下回ってくるはずだ。

(2022年5月19日、記)

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2022年4月21日

ポイント

米権力者層はすぐにロシアを「殺す」ことは望んでいない -米国の世界覇権戦略を支える日銀「ジャブジャブ」政策-

FRBの強烈な引き締め策は日銀の現行の政策の継続が前提に

 外国為替市場ではドル高圧力と円安圧力が強まっており、ドル・円相場は1月中には1ドル=113円台に弱含んでいたのが、3月中旬以降、上昇に拍車がかかり、4月20日には一気に129円台に達している。ドル高圧力はFRBがインフレ対応を重視して強力な金融引き締め政策を志向しているからであり、これからFOMCが開催されるたびに利上げを決めるだけでなく、その都度引き上げ幅を0.5%にすることも検討するだけでなく、資産縮小(量的引き締め)についても積極的に取り組んでいく姿勢を示している。また円安圧力が強まっているのは、日本でも米欧ほどではないとはいえインフレ圧力が強まっているにもかかわらず、日銀が現行の大規模な緩和策を継続していく姿勢を崩していないからだ。また、石油はじめエネルギー価格の高騰を主因として輸入金額が膨れ上がっていることから日本の貿易赤字が増大しており、足元では経常収支も赤字になっていることも、投機筋が円を売りやすくしている要因として指摘できる。実際、最近ではヘッジファンドは安心して円を売り込んでいるようだ。

 FRBが極端にタカ派的な金融政策を推進する姿勢を見せているのは、米国内で最近のインフレ傾向の背景として賃金上昇スパイラルの様相が強まっており、いったん景気を失速させてインフレ期待を沈静化させる必要が出てきていることがある。また地政学的、安全保障面ではこれまで、中国への封じ込めを優先して海外に駐留している米軍の配置転換を推し進めてきた結果、欧州方面が手薄になったところを今回、ロシア軍がウクライナに侵攻して欧州の安全保障が脅かされているので、中国とロシアをともに金融攻撃で潰そうとしていることも指摘できる。FRBは積極的に金融引き締め策を推進するにあたり、資金流出に見舞われることで新興国通貨危機に陥らないように配慮していくとしているが、実際には危機を引き起こす目的でこうした政策を推進しているのである。

 ただし、こうした政策を推進できるのは、世界最大の貯蓄超過(純債権)国であり、米国の中核的な属国の中央銀行である日銀が超緩和的な金融政策を維持し続けることが前提になる。これまで、FRBが超緩和的な金融政策を推進した際には、決まって日技がそれ以上の緩和策に踏み切ることでドル危機に陥るのを防いできた。今回も米国で新型コロナウイルス禍に見舞われて超大規模な財政出動政策に踏み切り、それにより増発される国債を吸収するためにFRBが未曾有の超大規模な緩和策を推進してきたが、それを支えたのも日銀だった。直近では、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行を排除し、同国の中央銀行が海外に保有している資産を凍結しただけでも相当な流動性ひっ迫をもたらす恐れがあるなかで、さらにFRBが金融引き締め策を強化する姿勢を見せているのも、日銀が現行の政策を継続しているからこそできることだ。

現行の日銀の政策に批判が集まるも米国が黒田総裁を守っている

 日本国内では日銀がこれまでの政策を続けていることに対して、各方面から批判が集まっている。今では国内製造業は生産拠点のグローバル化が進んでいることから、円安になっても輸出が増えるわけではない。むしろ、原油相場をはじめ国際商品(コモディティ)市況が高騰しているなかで、円安に動いていることで日本の貿易・経常収支が悪化しており、攻撃条件の悪化に悩まされている。企業は輸入物価の上昇による原材料価格の高騰に見舞われており、収益の悪化を回避しようとして販売価格に転嫁すれば家計が打撃を受ける。実際、食料品や日常品の値上げが相次いでおり、家計の負担が増して内需を冷やす要因になりかねない。最近では財界が行き過ぎた円安に懸念を示す姿勢を強めているだけでなく、首相官邸はじめ政界も今夏の参院選を控えて現行の日銀の政策には反対するムードが強い。ところが、日銀では黒田総裁だけが「意固地」になって、最近のインフレ傾向は国際商品市況の高騰によるものであって賃金の上昇を伴っていないために一時的な現象であることを理由に、政策変更を拒絶している。その背景には米ドル基軸通貨体制の維持を至上命題とするグループ・オブ・サーティ(G30)の路線があり、また国内的にはエマニュエル駐日米大使が黒田総裁を守っていることがある。

 なお余談になるが、携帯電話の通信料の引き下げ要因が剥落することで4月以降、日本の消費者物価指数(CPI)の前年同月比の伸びが日銀が目標値としている2%を超えてくることが見込まれるのを受けて、主要な報道・メディア機関の間で馬鹿げたことが吹聴されている。米外交問題評議会(CFR)系の意向を受けて日本経済新聞が中心になり、日本の報道機関の間ではこれまで、大規模に国債を発行したので利払い費が増えてしまい、予算を組めないなどと馬鹿げた論調を述べる大手報道機関の論説委員が多くなっている。しかし、例えば昨年度の予算では国債の利回りを1.5%で試算して21兆円もの利払い費が組まれたが、ゼロ金利状態だったために実際に使われたのは7兆円程度に過ぎなかった。これから日銀が利上げをすることで金利が上昇しても、既発債については関係がなく対象となるのは新規国債に限定されるので、利払い費が増えてもたかが知れている。そもそも、日本は世界最大の純債権国なので、いくら国債が増発されても容易に市場で吸収されてしまうはずだ。私たちは米国や財務官僚の意向を受けた主要報道機関による、いかにももっともらしい「妄言」に騙されないようにしなければならない。

流動性ひっ迫で調達資金の上昇から商品市況が暴落すればロシアはデフォルトへ

 ところで、プーチン大統領が西側の金融攻撃は失敗したなどと勝ち誇った姿勢を見せているように、SWIFTからの排除が決まった直後には、新興財閥オリガルヒが狼狽して資産の海外流出に拍車がかかったことからルーブル相場が暴落し、ロシア国債相場も急落したが、その後すぐに急速に出直っていき、少なくとも今では危機的な状態は遠のいている。これは一つには、実際にロシアに対する制裁措置が発動されるのは5月からであり、まだ発動されていないことがある。もう一つは、石油や天然ガスといったエネルギー関連や小麦、アルミニウムやニッケルといった非鉄関連で圧倒的な供給国であるのに見られるように、ロシア経済は国際商品市況の動向に大きく左右される傾向が強い。例えば89年11月にベルリンの壁が崩壊して91年1月にソ連が崩壊したのも、80年代にサウジアラビアがスウィング・プロデューサーの役割を放棄して大規模な増産に動いたことで、原油相場が一ケタ台に暴落したことがある。SWIFTから排除されたとはいっても、ドイツはじめ欧州はガスの供給のかなりの部分をロシアに依存しており、中東・北アフリカ諸国もロシアから小麦の供給を受けられなくなるとパンが食べられなくなってしまう。そのため完全にロシアの銀行が国際決済網から排除されたわけではないので、ロシアの金融情勢がひとまず落ち着きを取り戻して当然である。

 ただし、国際商品市況が下落すればそうとはいっていられなくなる。今、商品市況が高騰しているのはロシアからの供給途絶懸念といった純粋に需給関係によるものだが、その背景には潤沢な流動性資金による押し上げ要因があることも見逃せない。商品ファド勢が先物市場に証拠金として預ける資金が潤沢に調達できる環境にあるからこそ買い上げることができるが、資金供給元の金融機関が与信供給を絞って調達金利を引き上げてしまえば、ファンド勢としては借り換え(ロールオーバー)に支障を来す恐れが出てくる。それにより先物市場で買玉(ロング・ポジション)を手仕舞わざるを得なくなり、それに拍車がかかると暴落する恐れが出てくる。実際、14年秋の原油相場の暴落はこうしてもたらされたものだ。FRBが年末までには政策金利を2.5%程度とされる中立金利まで引き上げるように求めるFOMC委員の発言が相次いでいるなかで、やがて一転して原油はじめ商品市況が暴落することは十分に考えられる。その時、ロシアは本当の意味で債務不履行(デフォルト)に陥ってしまうのだろう。

当面はウクライナのアフガン化で米国独り勝ちへ

 ただ、少なくとも現時点ではそうした状態になっていないのは、米権力者層がすぐにそうした状況に陥ることを望んでいないことがあると考えるべきだろう。おそらく、米権力者層はいずれはロシアでナワリヌイ氏のような民主活動家を大統領に据えることで、エリツィン政権の時のように米欧財閥が背後に控えているオリガルヒが跋扈した状態にさせようとしているのだろう。ただ結論から先に言えば、当面は米国としてはウクライナでかつてのアフガニスタンのように泥沼化した状態が続いた方が有利であるからだ。なぜなら、段階的な形にせよロシアからのガス供給の全面的な禁止の状態に持ち込むことで、欧州主導で推進されている脱化石燃料に向けてカーボンニュートラルを標榜した環境保護政策が打撃を受けてしまい、米国内でのシェール産業が復活して同国が世界でも群を抜く産油大国になることが見込まれることがある。またロシアの軍事的な脅威を煽って欧州を脅していくことで、トランプ前政権下で弱体化してしまい、将来的に崩壊の危機にあった北大西洋条約機構(NATO)が立て直されようとしている。またそれだけでなく、ドイツには以前よりはるかに多くの資金拠出を実現させ、フィンランドやスウェーデンの加盟も実現する運びになるなど、以前より一段とNATOが再強化されようとしている。そして中国に対しても、ウクライナは習近平国家主席が対外経済進出政策として標榜している広域経済圏構想「一帯一路」において、ウクライナは中央アジアと欧州を結ぶ重要な中継拠点であるだけに、そこが泥沼の戦闘状態に陥ればこうした構想の骨格部分が腰折れすることになり、中国の世界覇権戦略は根本から動揺せざるを得ない。それに中国が対抗してロシアを支援しようにも、「二次的制裁」の概念を持ち出されて金融攻撃の脅しを受けていることで「手も足も出せない」状態だ。ウクライナで長期間にわたる泥沼化した戦闘状態に陥れば、どのように考えても米国が独り勝ちのような状態にならざるを得ないのである。

 円安には8年サイクルが認められ、現在のサイクルは15年6月5日の1ドル=125円82銭から始まっており、次にピークを打つのは23年である。おそらく、ドル・円相場は季節的には1月と4月前後にピークをつけることが多いので、足元の円安傾向はまもなくピークを打っても、来年にはもう一度それが進む局面が出てくるだろう――そのピークの水準は140~150円程度か。日銀の黒田総裁は23年4月に任期を終えるので、もう1回円安局面が到来しておかしくないわけだ。ただ、後任の日銀総裁に日銀の「生え抜き(プロパー)」出身である雨宮副総裁が順当に昇格すれば、おそらく利上げに転じるので円高基調に転換していくだろう。ただし、米権力者相違が望んでいる人物が次期総裁に就任するようだと当然のことながら別のシナリオを考える必要が出てくるが、それは現時点ではあくまでもメーン・シナリオではない。

(2022年4月21日、記)

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20022年3月18日

ポイント

FRBの積極的な金融引き締め策は確実に実行される ―構造的なインフレ要因への対応と中ロ撃滅戦略―

FRBは積極的な金融引き締め策の推進姿勢を打ち出した

 15~16日に開催されたFOMCでは、それに先立つ2日にパウエルFRB議長が議会証言で明言していた通り、0.25%の利上げが決まった。また会合後のパウエル議長の会見内容も当時の証言とほぼ変わらないものになると見込まれていたなかで、参加委員の今後の金利見通しの分布状況を示すドットチャートの内容が、前回の3月時点からどの程度タカ派的にシフトしているかが焦点だった。その結果は、22年の利上げの回数が1回につき政策金利を0.25%引き上げていくと仮定して、その中心値が前回の3回から7回に増加した―年内のFOMCで毎回利上げを決めていくことになる。さらに23年には3~4回の利上げが見込まれ、中立金利を従来の2.5%から2.4%に引き下げられたうえで、最終的にはそれをやや上回る水準まで政策金利を引き上げていく意向が示された。またFRBの保有資産の縮小(量的引き締め)についても、声明文やパウエル議長の会見で早ければ5月に開始される意向が示された。

 経済指標の中期見通しでは、22年10-12月期のGDP成長率の見通しが前年同期比で前回の4.0%から2.8%に下方修正された。22年末の失業率については3.5%と前回から変わらなかった。同年10-12月期の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前回の2.6%から4.3%に大幅に上方修正された。こうした経済指標の見通しを基に積極的に金融引き締め政策の推進を謳っているあたり、明らかに景気を犠牲にしてインフレ圧力の抑制に対処していこうとしていることをうかがわせるものといえる。GDP成長率が大幅に下方修正されたとはいえ潜在成長率の水準を維持する見通しとなっており、実際にパウエル議長が会見で「足元の経済は非常に強い」と述べている通りだ。ただし、FRBの政策がインフレ対応に傾斜しているなかで、足元の経済状況が好調ではなく、引き締め策の推進によりかなり悪化していくとの見通しを出してしまえば意図した政策を推進していくことが難しくなりかねないため、そのあたりは割り引いて見る必要がある―すなわち、実際には景気がかなり悪化するのをそれなりに覚悟している可能性があるということだ。

 ドットチャートで今後の政策見通しが大幅に修正される際には、見通しをまとめるのが難しいだけに参加委員の間でかなりブレが出ておかしくない。実際、利上げの最終地点については中心値で2.8%程度となっていたなかで、最もタカ派的な見通しではそれが3.6%程度に達していたものだ。ただし、22年については利上げの回数が中心値で7回とされているなかで、最低でも5回もの利上げが見込まれていたことから、少なくとも当面は積極的に引き締め策を推進していくことで見解の一致を見ているようだ。

今ではインフレは委一時的な要因が薄れて構造的な要因の比率が高まる

 果たして、そうしたFRBの姿勢が正しいのかを考えるために、足元のインフレの性格を考察する必要があるだろう。FRBが重視しているCPIの直近の2月の数値は、指標となっている食品を除く総合指数で前年同月比7.9%の伸びとなり、前月の7.5%から伸びが一段と高まった。またその総合指数にエネルギーを除くコア指数で見ても6.4%と前月の6.0%からさらに伸びが高まっている。最近の原油や天然ガスといったエネルギー市況の高騰を映してコア指数は総合指数より伸びが高くないが、それでもともに同じようなペースで伸びが高まっているあたり、CPIの伸びが鈍化していく兆しはまったく見られない。

 その一方で、2月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で10.0%と上方修正された前月分と同じ水準となり、CPIに比べると伸びが鈍化した。さらにコア指数で見ると8.4%と前月の8.3%をわずかに上回ったが、事前予想の8.7%を明確に下回った。一般的に、企業間の取引価格の指標であるPPIは消費者向けの販売価格の指標であるCPIに先行する傾向があるだけに、この発表数値を受けて市場では一部の関係者から、インフレ傾向がピークアウトした可能性を指摘する楽観的な見方が出ていたものだ。しかし、こうした見方は結論から先に言えば、それなりに的を射ている部分もあるとはいえ多分に一面的な解釈に過ぎないものであり、物価全体の動向を表しているものとはいえない。

 そもそも、最近のインフレ傾向は新型コロナウイルス禍から経済活動が再開する過程で、物流や供給網の混乱から急回復してきた需要増大に対処できないで生じている一時的な要因と、賃金の増大や住居費の増加による構造的な要因に大別される。経済活動が再開する初期においては、例えば港湾で荷揚げその他の労働者の不足等による処理能力が不十分だったことで沖合いにタンカーが多数停泊していたことが報じられるなど、一時的な要因によるところが大きかった。ところが最近ではそうした一時的な要因はかなりの部分が一巡して収束に向かっており、PPIの伸びがここにきて鈍化してきたのはそうした情勢を映したものである(ただし、原油相場がWTI市況で一時的に130ドルに達するなど国際商品市況が高騰していたので、ある程度のラグを置いてもう一度PPIを押し上げる局面が到来するとは思われるが)。

 それに代わって人手不足に端を発した賃金の伸びを主因とする構造的な要因の占める比率が大きくなり、今ではインフレ圧力の大部分を占めるようになっているようだ。その発端は新型コロナ禍から経済活動が再開し始めたなかで、人手不足から企業側が賃金を引き上げると、労働者側がより高賃金を求めて職場を変えてしまい、企業側もより賃金を引き上げざるを得なくなることで、賃金上昇のスパイラルの傾向が強まっていることを示唆するものだ。それは毎月発表されている米雇用統計で、自発的な失業者数が最近では急増していることにそれが端的に表れている。現在では労働組合が弱体化しているものの、それが強勢を誇った際の70年代から80年代初頭にかけての時期に二度の石油ショックによる強烈なインフレ状態に見舞われたが、当時と同じような経済社会構造になりつつあるわけだ。楽観論者の間では、足元のインフレ状態はそのかなりの部分がいまだに一時的な要因で占められていると思っているようだが、「能天気ぶり」も甚だしいといわざるを得ないものだ。

構造的なインフレ圧力に対処するには景気を失速させる必要がある

 どうして構造的に物価が上がりやすくなっているかというと、トランプ前政権が中国に貿易戦争を仕掛けるなど高関税による保護主義的な通商政策を推進し、さらに新型コロナの感染症が発生したことで同国に渡航禁止措置を打ち出したことも加わって国際間のサプライチェーンが破壊されたことが、その根本的な要因としてその基底に横たわっている。そうしたところに新型コロナ禍に見舞われて人手不足が重なったことで賃金上昇圧力が高まり、多くの人々の間でインフレ期待の高まりが醸成されてしまったと考えられる。こうした状況に対処するには、財政・金融両面で強力な引き締め策を推進し、インフレ期待を抑制させる必要がある。

 これはすなわち、意図的にオーバーキルを引き起こしていったん景気を失速させる必要があることを示すものに他ならない。二度にわたる石油ショックによる強烈なインフレ状態に見舞われた際に、労働組合の勢力が強かった欧米では景気刺激型の政策が推進されて一段とインフレ圧力が強まったのに対し、労使協調型の日本ではインフレ抑制を重視した政策が推し進められたことで見事に乗り切り、80年代半ば以降の日本経済の隆盛につながっていったのが想起される。FRB執行部が積極的に利上げを推進して政策金利をできるだけ早く中立金利とされる2.4%付近に、できれば実質金利を1~2%として4%程度に引き上げることに意欲を見せているのは、景気に配慮しながらというよりはむしろ意図的に悪化させていこうとしているわけだ。

米国の覇権を脅かし得る新興大国を撃滅する目的もある

 FRBがタカ派的な金融政策を推進していこうとしている要因としてインフレ対応以外にもう一つ指摘できるのは、米国の世界覇権を脅かし得る敵対国を潰していこうという意図もあることだ。これこそまさに、米ドルの基軸通貨としての信用を如何なく発揮して新興大国を潰していき、米国の覇権の維持を志向している外交問題評議会(CFR)系による戦略そのものであるといえる。そのCFR系の系譜であり、主要先進国・地域の金融政策を実質的に統括、管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)はオバマ政権下の14年1月に、最高幹部の一員だったフィッシャー前イスラエル中央銀行総裁を送り込んで副議長に就任させ、イエレン議長(現財務長官)の下でFRB執行部で主導権を握らせた。そうすることで、FRBに利上げ路線を推進させていくことで意図的に信用不安を引き起こし、中国を筆頭に新興大国を撃滅していこうとしたわけだ。

 その背景には、米国ではリーマン・ショックによる巨大な金融危機に対処するにあたり、バーナンキ議長(いずれも当時)が3回にわたる強力な量的緩和策を推進することでそれを克服し、米金融機関の財務内容も立ち直ったが、その副作用として中国を筆頭に新興大国が台頭して米国の覇権が脅かされる状況になったことがある。そこでフィッシャー副議長に主導権を握らせて利上げ路線を推進させていくことで、米国が積極的に反撃に出ていくことになったわけだ。今回のFRBのタカ派的な金融政策姿勢も当時と同じような目的があり、バイデン政権が昨年夏まで主導権を握っていた軍事産業系主導で中国を軍事的に封じ込めるために世界各地に駐留している米軍の配置転換を推進していった結果、欧州方面が手薄になってしまい、その間隙をついてロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、中国とロシアをともに金融攻撃で潰していくことになったわけだ。

 そうしたなかで、フィッシャー副議長が主導権を握っていた当時のFRBが思うように利上げを推進していけなかったことから、今回もFRBは積極的な金融引き締め策の推進路線から軌道修正を迫られるとの見方が市場では根強いようだ。当時、FRBの引き締め姿勢が新興国通貨不安を引き起こし、それが米国にも波及して信用の低い高利回りの社債の信用不安に波及したのが想起される。今回はそれに加え、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行を排除したことで国際金融取引が委縮してしまい、流動性が低下しているため、よけいにFRBは思うように引き締め策を推進していけないとの見方には根強いものがある。

信用不安の到来は不可避であり日銀が政策転換するとドル危機へ

 ただし、当時はデフレ圧力が根強い状態にあったことでFRBが思うように利上げを推進していけなかったのに対し、今回はインフレ圧力が相当に高まっており、経済環境が根本的に異なっている。また当時、信用不安が高まった高利回りの社債の多くは新興石油ガス開発企業で占められていたが、最近では環境問題の高まりによる脱化石燃料に向けた社会的な潮流を背景にシェール産業の増産投資がかなり鈍化していたため、この部門の新興産業の間ではそれほど債務が積み上がっていないことも指摘できる。市場関係者の間では当時の経験則もあり、FRBは今回も積極的に金融引き締め策を推進していけないと見るのは早計に過ぎるだろう。

 これまで、FRBのタカ派的な金融政策姿勢を映して2年債を中心とする中期債の利回りが上昇していたのに対し、長期債のそれが容易に上がらず、中長期間のイールドカーブがフラットな状態が続いているのは、市場がそれに懐疑的な見方が多いことを示唆するものだ。とはいえ、今回のFOMCの開催を控えた週初14日に長期債が売られて米長期金利が指標となる10年債利回りで一時2.2%台に急上昇したように、これからFRBの積極的な金融引き締め政策を映して一段と上昇していくことが考えられる。それはSWIFTからロシアの銀行を排除したことも加わって世界的に米ドルの流動性を低下させることになり、ドル高圧力が強まるとともに、特に新興国経済が危機的な状況に陥ることにならざるを得ない。足元では株価がウクライナ紛争や原油相場の高騰を背景に売り込まれていたなかで、そうした要因が薄れたこともあって急速に出直っているが、いずれ世界的な信用不安の高まりから下がりやすい状況が再燃しておかしくない。その時、黒田総裁が辞任を余儀なくされてしまい、現行の量的・質的緩和策に終止符を打って日銀まで利上げに動くようだとドル危機に陥るリスクが高まることになる。

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2022年02月16日

ポイント

ドルの信用の維持を目指す勢力とそれを妨害する勢力 -インフレには構造的な問題もある-

中長期間のイールドカーブのフラット化が意味するもの

 外国為替市場では足元ではインフレ傾向に影響を受けているFRBの金融政策、およびウクライナ問題による地政学リスクに左右されている。ただ後者の要因についてはあまりに不透明であることや、一時的な要因である可能性が高いだけに、主に前者の要因について見ていく。

 FRBは昨年11月2~3日にFOMCが開催されるまでは、声明文に物価上昇は「一時的」との文言を挿入し続けていたことで、雇用の回復を目的とするハト派的な姿勢を続けていたが、その翌週から急激にインフレ対応を重視するタカ派的な姿勢に転じた。12月14~15日に開催されたFOMCでは、参加委員の金利見通しの分泌状況を示すドットチャートの中心値からは、22年には3回もの利上げが見込まれていた。その後、インフレ加速を示唆する物価指標が発表されたこともあってさらにタカ派的な姿勢が強まっていき、現在では最低でも4回もの利上げが見込まれている。一部では、3月に量的緩和策を終えてからFOMCが開催されるたびに利上げが決まっていく――すなわち7回もの利上げを見込む見方まで出ているほどだ。

 ところが、米債券市場では先行きの利上げを織り込むことで中期債の利回りが上昇していたが、長期債についてはなかなか上がらず、中長期間のイールドカーブはフラットな状態が続いた。指標となる10年債利回りはここにきて、物価指標がさらなるインフレ加速の兆候が出ていたこともあってようやく2%台に乗せてきたが、本来ならもっと上昇してもよいはずだ。

 どうして上がらないのかといえば、一つは以前、FRBが緩和姿勢を見せていた際に主張していたように物価上昇は一時的との見方によるものであり、新型コロナウイルス禍から経済活動が再開される際の供給制約によるボトルネック要因が剥落すれば、インフレ圧力は減退していくのを織り込んでいるというものだ。もう一つが、利上げを推進していくことで株式や住宅といった資産価格が崩落して信用不安が強まり、グローバル規模でも米国への資金還流の動きが強まって新興国通貨危機が起こりやすくなるとうものだ。それによりFRBは利上げを推進していくことができなくなり、むしろ反対に利下げをせざるを得なくなることを市場が織り込んでいた可能性もあり得るだろう。

 このうち前者のインフレ圧力の問題については、当欄では以前、供給制約の問題が解消していけば当然のことながらそうした圧力が後退していくものの、構造的な要因もあることを考えれば、もはやFRBが目標値としている2%の水準を下回ることなく、上回る状態が常態化していくとの見通しを披露している。ここにきて賃金や住居費の上昇傾向が鮮明になっているが、その背景にはトランプ前政権が保護主義的な通商政策を推進し、特に中国に対して貿易戦争を仕掛けたことで、これまでの物価が上がりにくい経済構造をもたらしてきたサプライチェーンが瓦解されて機能しなくなっていることが、最近のインフレ圧力の根底にあるからだ。

 これは直近の物価指標の数値にも端的に表れていたものだ。1月の米消費者物価指数は前年同月比の伸び率が7.5%と前月の7.0%はおろか、事前予想の7.3%をも上回り、物価上昇がまだピークを打っていないことが示唆されたといえよう、ただそこで注目されるのが、食料やエネルギーを除くコア指数でも、その前年同月比の伸びが6.0%と総合指数と同様に前月の5.5%はおろか、前予想の5.9%を上回っていることだ。依然としてウクライナを巡る軍事的緊張の高まりから原油相場が高騰していることから全体の物価が大きく上昇しているのは致し方ないが、そうしたエネルギーを除く指標までもが伸び続けているのは、賃金が大きく伸びているなど構造的な要因によるところが大きいことを示唆するものだ。

 だとすれば、長期債の利回りが低水準で推移しているのが、物価上昇が一時的なものに過ぎないと市場が見ていたのであれば、じきに利回りは本格的に上昇していっておかしくないことになる。ただそうでないのなら、市場が示唆しているようにFRBのタカ派的な政策によりこれから株安や新興国通貨安、信用不安の高まりといった災難に見舞われる公算が高いことになる。

オーバーキルを引き起こそうとしているナチズム系の勢力

 ところで、バイデン政権では昨年1月に成立して以来、米国の世界覇権の持続を目指す軍産複合体系の中でも軍事産業系が主導権を握った。この勢力は米国が世界最強の軍事力を保持し続けることで覇権の維持を目指そうとしているだけに、バイデン政権は中国に対して軍事的な包囲網を構築するとともに、同国に対して強硬な外交姿勢を推進してきた。ところが、8月にアフガニスタンからの駐留米軍の撤退を巡り失態を演じたことでこの勢力が後退し、比較相対的に軍産複合体系のもう一方の勢力である外交問題評議会(CFR)系が影響力を強めるようになった。この勢力はドル基軸通貨体制を維持することで米国の覇権を継続させようとしているため、あまりに軍事力を強化し過ぎると国防費の伸びが高まることで財政赤字が膨れ上がってしまい、ドルの基軸通貨としての信用が毀損する恐れが出てくることからそれを嫌う傾向があり、社会保障支出の伸びについても同様である。インフレが進んでも通貨価値を毀損する恐れが出てくるだけに嫌っており、最近のFRBのタカ派的な金融政策姿勢はバイデン政権の支持率を浮揚させることを意図しているのと同時に、そこにはドルの信用を維持するという目的もあるわけだ。

 そうしたCFR系の路線は、足元のロシアに対する姿勢にも表れているものだ。バイデン政権はロシア軍の侵攻に備えて米軍の兵士を周辺に増派しているとはいえ、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことを理由に、ロシア軍が侵攻しても軍事的に対応することを否定している。いうまでもなく、その際にはロシアの銀行が米銀と取引を行うことを拒絶するなどしてドル決済網から除外するといった金融制裁を科すとして脅しているわけだ。それはまさにCFR系の路線に他ならず、そうした勢力が主導権を握っていることを示すものに他ならないいえる。

 昨年夏以前の時期にバイデン政権で主導権を握った軍事産業系の勢力は対抗勢力であるCFR系を抑え込むにあたり、トランプ前政権で主導権を握り、将来的に米国の覇権を意図的に後退させようとしており、ナチズム系の勢力の中のホワイトハウスの「居残り組」であり、民主党左派を後押ししている勢力と提携していた。バイデン政権が当初、新型コロナ対策を決めた後も、公共インフラ事業や環境保護対策、子育て支援等の家庭向けの対策として大規模な財政出動政策を推進しようとし、それにより増発される国債を吸収するためにFRBも強力な量的緩和策を続けてきたのもそのためだ。ナチズム系は米国の覇権を意図的に後退させようとしており、軍事産業系に同調することで財政赤字やFRBの総資産を膨張させ、将来的にドルの基軸通貨としての信用を失墜させようとしていたのである。

 そのナチズム系では今、CFR系の路線にも同調してFRBの積極的な引き締め政策をさらに増幅しようとしている。それにより米国経済にオーバーキルを引き起こして資産バブルの崩壊や景気の悪化に拍車をかけることで、24年の大統領選挙でトランプ前大統領が勝利しやすい環境にしていこうとしているわだ。FOMC委員の中でも「風見鶏」などと呼ばれており、権力者層の意向に忠実に従って発言内容を変えることで知られているセントルイス連銀のブラード総裁が最近では最もタカ派的な姿勢を示しているが、それはトランプ前大統領に勝利させることで、26年2月に次期FRB議長への就任を目指しているのがその好例である。そのブラード議長は先週10日に、3月に0.5%の利上げを決め、7月1日までに(つまり6月のFOMCまでに)政策金利を1%まで引き上げることを提唱するなど、ここにきて一段とタカ派色を強めているのが注目される。

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2022年01月20日

ポイント

FRBの強硬なタカ派姿勢の背景を探る- CFR系の意向に従ってFRBが姿勢を大転換 -

FRBのタカ派姿勢でもドル高圧力が強くならないのはなぜ?

 国際金融市況は最近、値動きの荒い不安定な動きが続いている。FRBの金融政策が昨年11月2~3日のFOMC以降、急速にインフレ対応への姿勢を重視してタカ派的にシフトしてきたなかで、市場では想定通りに利上げや量的引き締めによるFRBのバランスシートの縮小に動いていけるのか、不透明な状況であるからだ。物価関連指標の発表等でインフレ懸念が高まったり、FOMC委員がタカ派的な内容の発言をすると米長期金利が上昇してリスク回避が強まり、株安になるとともにドル高に振れやすくなる。反対にFRBの引き締め姿勢に対して懐疑的な見方が強まって長期金利が低下すれば、株高とともにドル安方向に動いている。ただし、リスク回避が極端に強まるとドル高以上に円高に振れることもあり、ドル・円相場は下がりやすくなることもある。

 FRBは昨年12月14~15日にFOMCが開催された際に公表された、参加委員の今後の金利見通しの分布状況を示すドットチャートの中心値では、利上げの回数が22年と23年に3回、24年に2回とされていた。その後、年明け5日にその会合の議事要旨が公表された際には、量的引き締めについても議論されていたことが明らかになったことがタカ派サプライズとされたものだ。さらにその2日後に12月の米雇用統計が発表されると、非農業部門の就業者数を除いて(おそらく、意図的に実態より低めに出ていたと思われる)失業率や平均時給その他、軒並みタカ派的な内容になった。それにより、その時点では量的緩和策が終わる3月に利上げが開始されて年内に4回もの利上げが行われ、また6月に量的引き締めが始まるとの見方が市場では有力になったものだ。

 その後、11日にFRB議長の再任を目指す上院での指名公聴会では、パウエル議長は利上げの時期を特定せず、量的引き締めの開始も今年後半を示唆する発言をした。また12日には12月の米消費者物価指数(CPI)が、13日には同月の生産者物価指数(PPI)が発表されたが、ともに前月に続いて高水準の伸びを示したものの、一部でその鈍化の兆しをうかがわせるものが散見されるものとなった。それを受けて、市場では年内の利上げの回数が3回に、量的引き締めの開始も年後半が優勢になるなどタカ派的な観測がいくぶん後退した。しかし、13日に上院での副議長への指名公聴会で、それまでFRB執行部でハト派的な金融政策の推進を牽引してきたブレイナード理事がタカ派的な姿勢を示したのをはじめ、他の多くのFOMC委員も活発にそれに同調する発言をしたことから、市場では年内の利上げの回数が再び4回との見通しが優勢になっている。

 実際、米長期金利は指標となる10年債利回りで昨年12月中にはおおむね1.4%台で推移していたが、年末から上昇していき、直近では1.8%台後半に達している。それによりハイテク株主導で株価が不安定な動きになっているものの、外為市場ではそれほどドル高圧力が強くならないのが気になるところだ。それは一つには、リスク回避になると米ドル以上に日本円が買われやすくなるだけでなく、日本でもCPIが日銀が目標値としている2%の水準を達成することで、年内に現行の量的・質的緩和策が修正される可能性が指摘されるようになったことも指摘できる。またそれ以外にも、インフレ自体が一時的なものに過ぎないとの見方や、引き締め策が推進されていくことで金融市場で株価が急落したり新興国通貨危機が起こるなどで信用不安が高まったり、オーバーキルが引き起こされて景気が悪化するとの見方が根強いことも指摘できる。実際、債券の年限別の利回り動向を示すイールドカーブの形状では、中長期の部分が慢性的にフラット化していることにそれが見て取れる。

インフレの背景に供給制約以外にサプライチェーンの破壊が根底にある

 日銀の金融政策については前月の当欄で述べたので、今回は最近のインフレ動向の本質や、FRBがタカ派的な金融政策を推進していこうとしている目的としてより政治的及び安全保障面での要因を指摘することにする。

 まずインフレの動向だが、ここにきてそれがやや鈍化する兆しが出てきたのは、新型コロナウイルス禍から経済活動が再開されてきたなかで、供給制約によるボトルネック要因から物価が上がっている面がそれなりに強かったが、それが剥落しつつあるからだ。昨年秋頃までは港湾で荷揚げができずに沖合いに停泊していた貨物船タンカーがかなりの数に上っていたが、それが最近ではかなり少なくなっているといった事例が報告されている。ただそこには、雇用統計で賃金が、また雇用コスト指数でも大幅に伸びているなど、賃金インフレによる圧力が高まっていることも見逃せない。またCPIの統計の内訳を見ても住居費がかなり上がっているなど、慢性的、構造的に物価が上がっている要素があることも見逃せない。これまで政府が新型コロナ禍対応で現金給付や失業手当の加算支給により手厚い支援策を推進してきたことで、家計の貯蓄がかなりの高水準に上っているため、多くの人たちが低賃金の職に就こうとしないことがある。日本とは異なり米国では頻繁に就職先を変えることに違和感がなく、自らの能力でできる範囲内での付加価値の仕事であれば、高賃金のところに容易に職場先を変えてしまうのである。それは最近の傾向として、雇用統計での自発的失業者が増えていることに端的に見て取れるものだ。

 ただし、そこには米系多国籍企業が関係しているサプライチェーンが「破壊」されているという、より根本的な要因を指摘しないわけにいかないところがある。「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」を標榜していたトランプ前政権が保護主義的な通商政策を推進し、特にサプライチェーンの中核である多国籍企業の生産拠点を多く抱えていた中国沿海部を擁する中国に対して貿易戦争を仕掛け、さらに新型コロナが起こった初期に米政府が中国に対して渡航禁止措置を打ち出したことで、その拠店が米国内に回帰しているか、他の国・地域にシフトしたことによるものだ。最近のインフレ圧力の高まりは確かに供給制約による一時的な要因によるところもあるが、その根底にはこうした構造的な要因があることをしっかり押さえる必要がある。むしろ、供給制約による一時的な要因が剥落することでインフレ圧力がより緩やかなものになれば、経済活動には好影響をもたらすことが期待できることになる。

 インフレ圧力が高まっているにもかかわらず、米国経済は昨年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率で7%台と、昨年前半期を上回る高成長を記録しそうだ。足元の1-3月期については鈍化しそうだが、それでも巡航速度に落ち着く程度に過ぎず、不況感はまったく感じられない。通常、物価上昇圧力が強いと名目的な消費総額の伸びは高水準に達しても実質ベースではそれに相殺されて鈍るものだが、現在の米国ではそれを上回るほどに消費性向が強い状態にある。これこそ、まさにコンドラチェフ・サイクルの上昇局面での特徴的な現象に他ならず、物価の伸びを所得の伸びが上回り続けることで実物経済主導で経済成長が追求されていくことになる。ただ前回の当欄で述べたように、その前にFRBがインフレ対応で利上げや量的引き締め策を推進していくことで株価が大幅な調整安を強いられてしまい、「創造的破壊」による局面を経る必要がある。

ドルの基軸通貨としての信用を維持するためにタカ派姿勢に転換

 次にFRBがタカ派的な金融政策姿勢に転じた背景として、より政治的な要因について見ていく。バイデン政権では昨年初に成立当初は軍産複合体系の中の軍事産業系が、トランプ政権の背後のナチズム系のホワイトハウスの「居残り組」と提携することで、軍産複合体系のもう一方の外交問題評議会(CFR)系を抑え込むことで主導権を握ってきた。それにより、バイデン政権は外交・安全保障政策面では軍事産業系主導で中国に対する強硬姿勢と軍事的な包囲網の構築に動く一方で、経済政策面では居残り組が後押ししている民主党左派主導で新型コロナ禍対応や公共事業、社会保障向けに大規模な財政出動政策の推進が試みられてきた。政府のそうした政策に基づいて、FRBもそれにより増発される国債を吸収する目的で、資産を毎月1,200億ドル購入し続ける大規模な量的緩和策を推進してきた。

 そうした政策が奏功し、新型コロナ禍から経済活動が再開すると一気に高成長を記録するようになる一方で、前記のようにサプライチェーンが「破壊」されたなかで供給制約の問題が重なったことでインフレ圧力が極端に強くなってしまった。そうしたなかで、昨年8月にアフガニスタンからの米軍の撤退を巡り失態を演じたことでバイデン政権の支持率が大幅に低下したのを受けて、主導権が相対的に軍事産業系からCFR系にシフトした。ナチズム系が米国の世界覇権を意図的に後退させようとしているのに対して軍産複合体系は中国を筆頭に新興大国を撃滅して覇権を持続させようとしているが、その中でも軍事産業系が軍事力を増強することでそれを実現させようとしているのに対し、CFR系は米ドル基軸通貨体制を維持することでそれを達成しようとしている。そのため、CFR系はあまりに軍事力を強化し過ぎると財政赤字が膨れ上がってしまい、ドルの信用に支障を来す恐れがあることからそれを嫌う傾向があり、社会保障向けの財政支出についても同様である。

 FRBが昨年11月にハト派的な金融政策姿勢を抜本的にタカ派的に大転換したのも、CFR系が相対的に主導権を握ったことと大いに関係がある。バイデン政権の支持率が低迷しているなかで、インフレの問題にしっかり対処しないことには11月の中間選挙で与党・民主党が大敗するのが必至であるだけでなく、2年後の大統領選挙でもトランプ前大統領に敗れてしまいかねないからだ。しかも、CFR系は米国の覇権を持続させるためにドルの信用の維持を最重要としているなかで、インフレは直接的に通貨価値を毀損させ得るので、その対処を優先する政策姿勢の推進がFRBに要請されておかしくない。しかも、FRB執行部がインフレ対応によるタカ派的な姿勢に抜本的に転換したなかで、世界中の主要先進国・地域の中央銀行の金融政策を実質的に統括、管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)も米ロックフェラー財閥本流系の直接的な影響下にあり、ドルの信用の維持を至上命題として動いているため、他のFOMC委員である地区連銀総裁の多くがそれに同調して当然である。

中国とロシアを同時に金融攻撃することがもう一つの大きな目的

 FRBがタカ派的な金融政策姿勢にシフトしたのはそれだけではなく、安全保障面での要因も重要である。これまで、バイデン政権は日本や豪州といった太平洋諸国や英国、及びフランスやドイツといった欧州勢とも提携しながら中国に対する軍事包囲網の構築に動き、それとともに米軍の再配置も進めてきたなかで、それ以外の地域では米軍による駐留が手薄になっている。しかも、中東では長期にわたり戦乱状態が続いて今でもイランが反米的な姿勢を続けているなかで、特に欧州では東西冷戦が終わってソ連が崩壊して以来、目立った紛争が起こらなかっただけに、よけいにそうした傾向が強い。その間隙をついて、ロシアがウクライナに対する軍事的な脅威を高め、さらにその向こう側の欧州を圧迫する動きに出ている。それに対し、CFR系主導の米国がドルの基軸通貨としての信用を存分に利用しながら、FRBにタカ派的な金融政策によるドル高政策を推進させることで、米国への資金流出圧力を強めて中国とロシアを同時に金融面で攻撃する動きに出ているわけだ。

 以前、オバマ政権下でG30から最高幹部としてFRB執行部に送り込まれてイエレン議長(現財務長官)の下で主導権を握ったフィッシャー副議長は、米国の覇権とドルの信用の維持を目指して中国はじめ新興大国を撃滅するために利上げを推進しようとしたが、そのペースは非常に緩やかなものになり、量的引き締めにはあまり着手できなかった。それに先立つ13年4~5月にバーナンキ議長(いずれも当時)が量的緩和の縮小(テーパリング)に着手することを表明したことでテーパータントラムと呼ばれる新興国通貨不安が引き起こされたなかで、中国でもたびたび信用不安に悩まされてしまった。ただ、米国もそうした国際的な信用不安の「返り血」を浴びたことで、新興企業が発行した社債を中心にハイイールド債の償還問題が高まったのが想起される。

 ただし、当時は経済状態がデフレ体質だったのに対して現在ではインフレ状態にあることが異なるところだ。デフレ圧力が強い状態にあった当時はグローバル規模で信用不安が強まると、それでも利上げを模索していたFRBに対して非難が高まったものだ。ところが現在では、FRBには引き締め政策を推進するにあたり、インフレへの対処という十分すぎるほど有力な名分があるため、少なくとも当時に比べると強い批判にはさらされにくい。しかも、先進国のように経済力が強いところでは多少、物価が上がっても賃金を引き上げるなどで所得水準を上昇させれば対応できるが、新興国ではそうはいかないのであり、物価の上昇は一般民衆の生活苦に直結する問題だ。新興国で政情不安や社会不安が起こる時には、決まってインフレの問題が大きく影響しているものだ。実際、最近でもカザフスタンで燃料価格の高騰をきっかけに大規模な抗議デモが起きているのに見られる通りだ。そのため、新興国側としてはFRBがこれから金融引き締め策に向かうことは大きな脅威に違いないが、それでもインフレ対応の問題を持ち出されると表立って批判しにくいのである。

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